人手不足に悩む電子機器企業

労働傷病兵社会問題省(MOLISA)当局者によると、ベトナムでは多くの電子機器企業が人手不足に陥っているといいます。

オートメーション技術がヒトの労働に取って代わるという予測は数々ありますが、ベトナムの電子機器メーカーではまだ人手が足りていません。特に技能や資格を持つ人材が不足しています。

MOLISAの労働科学・社会問題研究所(ILSSA)労働環境条件研究活動センターの責任者Chu Thi Lan氏によると、ベトナムの電子機器企業の数は、2006年から2015年までの10年間で307社から1,165社へと年16.3%増の勢いで急増しており、電子機器企業で働く労働者数も2009年から2016年までの10年間で14万2,800人から45万3,200人へと急増しています。

ただし、彼ら労働者の約70%はその仕事に必要とされる資格を持っておらず、電子機器企業の80%は熟練労働者の深刻な人手不足に直面しているといいます。

この人手不足を招いている要因のひとつに「新しい技術」を挙げているのがILSSA所長のDao Quang Vinh氏です。

「新しい技術は、激しい変化への適応を労働者に求め、競争を活発にし、製造コストを引き下げ、より質の高い労働者の需要を確立する」とVinh氏は述べています。

しかしながら、ベトナム人労働者の大半は地方出身者で、技術職の訓練をまともに受けていません。そのため、技術変化に適応する柔軟性が彼らに欠けていると指摘するのがMOLISAの労働者・労組研究所の所長Vu Quang Tho氏。

Tho氏はまた、製造工場の過酷な労働条件も一部労働者の離職を助長していると述べています。

MOLISAの主任調査官Nguyen Tien Tung氏は、2017年にベトナム国内の電子機器企業216社で不正が発覚したことを明らかにしています。「いずれの企業も、従業員に超過勤務を強いており、それらの企業の6割が時間外勤務手当の規則に違反していた」ようです。うち27社は、重大な労働法違反で14億VND(6万1,600 米ドル)の罰金が科されました。それら企業の多くが労働者の権利を保証していなかったとTung氏は指摘します。

労働条件改善のため、電子機器企業に対して労働慣行の刷新、労働規則の厳守、労働基準の維持などの措置を実施すべきだと主張しているのがChu Thi Lan氏です。

Lan氏は、「電子機器企業は、強制労働と児童労働を絶対に避け、35歳超の労働者の解雇を差し控えるべき」とも唱えています。

電子機器企業は、新しい技術を導入する場合、その都度訓練・再訓練を労働者に施すべきだと主張するのが前出のDao Quang Vinh氏。

Vinh氏は、「労働者は(技術)変化を敏感に感じ取り、新たなニーズに応える新たな技能を習得する用意がなければならない」とし、「技術変化についていけない労働者には、他の雇用機会について情報が提供されるべきだ」と述べています。

Vinh氏はまた、電子機器企業で働く労働者の雇用の安定とOJTが図られるような政策の実施を政府に求めています。

ベトナムで働きたい外国人のために

インドシナの労働市場が活気を呈している今、あなたはベトナムで仕事をしてみたいとお考えですか? ベトナムのビジネス界は外国人には理解しにくいため、私たちベトナム・ガイドがお助けしましょう。ベトナムの経済、就労許可、雇用機会については、以下をお読みください。
* ベトナム経済は自由化しつつあり、目覚ましい成長を続けています。
* 大半の外国人移住者は、社会保障負担金が免除されています。
* 就労許可証の取得手続きは複雑であり、ベトナム政府は深刻に受け止めています。

ベトナムで働く計画ならば、ベトナムの文化的価値観と伝統を理解することが不可欠です。それなくして、強力なビジネス関係を築くことはできません。結局のところ、文化的価値観はビジネス環境に如実に表れるものだからです。

ベトナムは20世紀後半に激しい経済的混乱を経験しました。対米戦争(ベトナム戦争)と米国の禁輸措置は、今もその影響が強く残っています。他方、ベトナムは世界的景気後退による困難に直面しながらも、経済成長期を迎えています。それゆえ、ベトナムで働けば、大きな見返りが得られます。

ベトナムのビジネス界:階層がカギ
ハノイであれホーチミンであれ、ベトナムで働いてみれば、ベトナム企業が階層型組織であることをすぐに理解できるでしょう。決定を下すのはトップで、多くの場合、トップはその会社の最長老です。それゆえ、仕事仲間やパートナーに敬意を払うことを忘れてはいけません。特にその人が年長者の場合には。

ベトナムのビジネス界や社会において地位は重要な要素です。ベトナムで働くときは、年齢だけではなく、教育を通じて一定の地位が得られます。ベトナムのビジネス界はかつて男性が支配していましたが、上級ポストに就く女性が増えるとともに、この国では性的革命に進みつつあります。

貧困国から躍動的な経済へ
ベトナムは世界有数の低失業率の国で、2016年初めの失業率は2.23%でした。1986年以降、ベトナムは経済発展に成功してきました。過去四半世紀の間に世界の最貧困国から低中所得国へと地位を高めました。2000年代からはGDPが急激に伸び、貧困率も58%から14%に低下しました。

2015年に輸出が伸びた唯一の国がベトナムで、金融危機の影響は限定的でした。実際、ベトナムの危機対応は称讃され、GDP成長率は2014年が5.5%、2015年が6.5%を記録しました。

こうした成果の大部分は、主要経済セクター(農業、食品産業、繊維、家具、エネルギー、観光業、電気通信など)における政府の改革によるものです。すなわち国有企業の民営化、ビジネス環境の改善、外国投資の誘致促進、効果的な通貨政策の導入です。

こうしてベトナムは、経験に富み熟練した外国人移住者にとって働きたい国となりました。活発な国内消費とFDIを優遇する環境づくりによって、多くの機会が提供されています。

その一方、ベトナムの潜在的経済力には不安材料もあります。実際、大量の不良債権は銀行部門の頭痛の種で、不十分な資本化も深刻な脅威となっています。とはいえ、ベトナムの将来的見通しは依然として明るいものがあります。2016年にTPPに署名し、太平洋地域の他の11カ国(当時)との繋がりができました。また農業とエネルギーの潜在性は、熟練した低廉な労働力と合わさって、経済の明るい未来を保証しています。さらに2016年末のベトナムのGDP成長率は6.4%となる見通しです。

就労許可証:簡素化されつつある複雑な取得手続き
外国人移住者がベトナムで仕事を始めるには、就労許可証を取得する必要があります。そのために、外国人は労働契約を結び、(外国人のために手配する用意のある)雇用主がいなければなりません。外国人は、各都市に置かれた労働傷病兵社会問題省(MOLISA)の地方事務所に申請します。ベトナム政府は現在、就労許可要件の簡素化と取得免除に関する改革を進めています。いちばん最近の改革は2016年4月に実施されました。

就労許可証の取得免除対象者
外国人移住者のうち、労働許可証の取得が免除される有資格者について列挙されたリストがあります。以下はその要件を説明したものです。
* 働きたい分野で3年以上の経験がある学士号を持つ外国人移住者。これは、当該外国人が1度に30日以内、1年に合計90日を超えない範囲でベトナムに滞在する場合にのみ適用されます。
* 転勤してきた外国人移住者。彼らに転勤を命じた会社が次のいずれかの分野(情報技術、ビジネス、教育、流通、建設、保健、環境、金融、運輸、観光業、エンタテインメント)で事業活動をしている場合に限ります。本免除を受ける外国人移住者は、就労許可証の有効期間満了までベトナムに滞在することができます。
* 外国大使館の管理下にあるインターナショナル・スクールで働く教師。ベトナムの学校で働くときは、ベトナム教育省から許可を得る必要があります。本免除を受ける外国人移住者も、就労許可証の有効期間満了までベトナムに滞在することができます。
* ベトナム企業で働くインターン、国際的NGOから派遣された公認のボランティア、ODAプロジェクトの実施を支援する専門家。本免除を受ける外国人移住者も、就労許可証の有効期間満了までベトナムに滞在することができます。

また雇用主は、MOLISAに書類を送付しなければなりません。MOLISAは3日以内に就労許可証の免除を承認します。免除期間は2年間です。

就労許可証が必要な外国人移住者
ベトナムで働くその他の外国人は就労許可証が必要です。彼らはMOLISAに書類を提出しなければなりません。雇用が開始される少なくとも2週間前までに以下の書類をMOLISAに提出しなければなりませんが、可能であれば数カ月前に手続きを開始することを強くお勧めします。
* ベトナムで働くためにスタッフを派遣する外国企業での勤務証明書
* 有資格者により認証されたパスポートの写し
* 被雇用者の就労許可証を取得するために雇用主が書いた依頼書
* 外国またはベトナムの公認機関が発行した医療証明書(12カ月間有効)
* マネージャー、管理職、専門職または技術労働者の資格を証明する書類
* 出身国での犯罪歴。30日を超えてベトナムに居住している場合、ベトナム当局からこれを取得すればよい。
* 最近6カ月以内に撮影したカラー写真2枚(4 cm x 6 cm、背景白地、正面向き、無帽、サングラス不可)

MOLISAは7日以内に就労許可証の免除を承認します。免除期間は2年間です。

大学は出たけれど。。。

Nguyen Van Duc氏は2年前、ベトナム有数の名門大学で経済学の学士号を取得しました。現在はハノイのバイクタクシー運転手として働いており、月収は約250ドルです。

両親とも副業で遣り繰りしなければならないほど貧しい家庭だったため、3人兄弟のなかで大学に通えたのはDuc氏だけでした。ベトナムの失業率は2.3%にすぎませんが、Duc氏は、大学は出たけれど、好きな分野の仕事に就けない何千人もの大卒者の一人です。

「大学では、厳しい理論的訓練を受け、共産党の歴史とホーチミンの思想を詰め込まれただけでした」と、その25歳の青年は語ります。

ベトナムの学校では、低賃金の組立流れ作業の基礎的スキルを教わりますが、大学はもっと複雑な仕事ができるような教育をしていません。ベトナム人労働者の賃金が上昇し、基幹製造業が他の低賃金国に流出してしまえば、世銀の定義する「中所得国」(一人当たりの所得4,000ドル以上、これは現在のベトナムの水準の約2倍の水準)を達成するというベトナム政府の野心が頓挫しかねないからです。

スタンフォード大学の開発経済学者スコット・ロゼール氏は、「次の経済段階にうまく移行できた国は、中所得国である間にすでに先進国並みの教育レベルに到達しています。そこに到達していない国は立ち行かなくなります。つまり中所得国の罠に嵌っているのです」と指摘しています。

シンガポール、韓国、台湾は、高学歴の労働者が必要になるはるか以前から質の高い大学を備えていました。逆に、アルゼンチン、ブラジル、メキシコなどは、教育投資が不十分だったこともあり、中所得国になってからも鈍い歩みを続けています、とロゼール氏は言います。

ベトナムの大学生が最初の2年間の大半を費やして学ぶのは、批判的思考のような雇用者の期待するスキルではなく、革命指導者ホー・チ・ミンや社会主義、共産党の歴史についてです。その挙げ句、学位はあっても必要なスキルを欠く労働者が増産されるのです。そうした労働者に対して多額の賃金を支払うことを企業は嫌がる、とベトナム商工会議所は説明しています。現在、ベトナムの大卒者の失業率は17%にのぼります。

政府への圧力
「ベトナムに進出してくる外国の民間企業は、優秀な熟練労働者や管理職、エンジニアを求めています」と語るのは、ホーチミン市にあるハーバード・ケネディ・スクール・オブ・ガバメントの上席研究員Nguyen Xuan Thanh氏です。「ベトナムでは中間層が拡大しています。親御さんは教育の改善を求めており、その期待に応えるよう政府への圧力は強まっています。」

最近は、将来の就職のことを考えて、子弟を海外で学ばせようとする親が増えています。日本学生支援機構によると、語学学校を含めて日本で勉強するベトナム人の数は、2016年5月までの6年間に12倍以上となる約5万4,000人にまで増加したといいます。

当局も課題は認識
「政府は、大学における訓練の質を改善しようとはしています」と語るのは、教育省の新たなカリキュラム戦略を監督しているNguyen Minh Thuyet氏。「私たちは、仕事に役立たない科目の削減に向けてカリキュラムを刷新する必要があります。ただし、その進捗状況ははかばかしくなく、ほとんど前に進んでいません。」

識字率と生産性
ベトナムの大学は過去10年間で約450校にまで増えました。政府は、大学進学者数を今後10年間で約8%増、2020年までに56万人にする計画です。

労働科学・社会問題研究所の調べによると、2017年のベトナムの識字率は97%でしたが、ベトナム人労働者の3分の1が高卒でした。

現状において、ベトナムは生産性が低いわりに、急速に発展しています。世界銀行は、ベトナムの成長率は2019年までは6%超を続けるとの見通しを示しています。ただし、その労働力から最大限の生産性を引き出しているかとなると、ベトナムは域内諸国の後塵を拝しています。

ベトナム経済の工業生産力は、東南アジア諸国のなかでも最低水準にあります。シンガポールの工業生産力はベトナムの26倍、マレーシアのそれは6.5倍、タイとフィリピンのそれは1.5倍です。

プラス材料
それにもかかわらず、いくつかの理由から期待も持てます。米国務省から資金援助を受け、ベトナム政府が承認した初の独立・非営利組織フルブライト大学ベトナム校が今秋開校する予定です(同校のThuy Dam Bich校長談)。同校ではマルクス主義も教えられますが、欧米の大学で通常おこなわれているように、ヘーゲルやカントらの哲学と同様に扱われます。

企業各社は、労働者の能力を期待する水準に引き上げるため、若者に追加の教育を施しています。ベトナム最大の情報通信会社FPTは、国内約2万人の高校生や大学生を教育するための施設を備えています。ホーチミン市に組立・試験工場を持つインテルは、複数の教育プログラムに2,200万ドルの出資を約束しています。

しかしながら、この国の既存のシステムに嵌ったまま身動きのとれない人にとって、教育は「時間とカネの膨大な無駄使い」になる可能性があると労働科学社会問題研究所のLuu Quang Tuan副所長は指摘しています。

「多くの大卒者は、チームワークや組織的技能のような企業で働くための重要なスキルを欠いており、それも経済の足を引っ張っている要因です」とTuan副所長は述べています。

ITの仕事は「女の子にはきつい」という女性差別的な規範に異議あり

ベトナムの女性の非識字率は男性の2倍です。読み書きができない少女たちは、科学技術分野の女性差別的な規範に公然と異を唱えています。

わずか3年前まで、Pham Thu HuongさんはemailアドレスもFacebookアカウントも持っていませんでした。そのため、ベトナム全土で増殖するインターネットカフェに行ったこともありません。実際、キーボードに手を触れることすらなかったのです。

その彼女が、今やコンピューター科学で大学の学位を取得しようとしており、ビデオゲームのコード解読に熱心に取り組んでいます。“Xin chao, the gioi”(「ハロー・ワールド」の意味のベトナム語)といった簡単な挨拶を印刷するのに予め習得しておかなければならないプログラミング言語全体に感動しています。

マイクロソフトの教育施策YouthSpark(ユーススパーク)の支援を得て、Huongさんは、アルバイトにあまり時間を取られることなく、学業により多くの時間を割けるようになりました。テクノロジー研究に関心を持つ将来有望な若い女性を対象にしたこのプログラムは、ハノイにある教育開発センターという非営利団体によって運営されています。学生たちは、職業上の目標について論文を書き、資金援助が必要な理由を説明した文書を添えて申請します。

YouthSparkは、テクノロジー部門を重視する一方で、より幅広い歴史的な流れも考慮に入れています。もともとベトナムには、サイゴン港に植民船を迎え入れた貿易商から、中国との陸の国境を自由に往来した商人にいたる、個人の起業家精神という伝統があります。この伝統の淵源は、多くの国々が誕生するよりもはるか昔にさかのぼります。

しかし、情報技術がもたらした現代の変化は、この伝統を更新しつつも、十分な知性があり懸命に努力する人であれば、その生い立ちを問わず、物事を成し遂げられるという精神を伝えています。

Huongさんの場合、出身地はナムディンの村で、首都ハノイからは100キロ以上離れたところにあります。その村は、豆腐と竹笠の商売で知られています。ナムディンでは、彼女の母親が病気の夫と息子を養うために野菜を売って生計を立てていました。Huongさんは近所のサイバーカフェでゲームをするための小遣いを両親にせがもうとはしませんでした。村はインターネットで繋がっていましたが、Huongさんに関するかぎり、World Wide Webは彼女の暮らす世界の片隅にまでは届いていませんでした。

その後Huongさんが将来テクノロジー分野で働きたいと考えるようになったとき、友人や親戚、隣人たちは口を揃えてこう言いました。「小娘がITの世界で何をしようというの?」

ある晴れた週末、オートバイに乗って颯爽と姿を現したHuongさんは、最近あるインタビューで、「みんな同じことを言うの。そりゃあ、きついよ。たぶん女の子にはすごくきついと思うよって。今でも彼らは、それは男の子がやることだって考えてるみたい」と答えています。

ベトナム人の独立をめざした徴(チュン)姉妹の反乱について書かれた小学教科書から、妊娠中や出産後の婦人を保護する職場政策にいたるまで、ベトナムは男女平等を国家の中心的な課題に据えています。それでも、女性差別的な規範はまだ生き続けています。Huongさんの村の人びとは、コンピューターは男がやるものというイメージに囚われていました。彼らが言うには、お前は女なんだから、ふつうの仕事に就くよりも教師のような仕事に就くほうがずっと向いていると。

しかし彼女の病弱な父親は、そのようなことは言いませんでした。Huongさんは昔を懐かしむように笑みを浮かべながら、父親がIT分野で働くよう彼女に勧めてくれたときのことを語ってくれました。ITスキルがあれば、娘には仕事が簡単に見つかり、自分のように経済的に苦しまずに済むと父親は思っていたのでしょう。Huongさんは当初、教育学を専攻しようと考えていましたが、父親を思いやって、教育学に代わる進路を探していました。たまたま叔父の家にあったパソコンをいじくるようになり、すべての情報が楽々と手に入ることに驚嘆しました。結局、彼女は首都ハノイの国立大学でコンピューター科学を専攻することに決めたのです。

Huongさんは今年(2018年)、ベトナム全国の8大学を対象とするYouthSparkスカラシップを受けられる女子学生80人のうちの一人となりました。IT関連の学位を重視するこのスカラシップは、ベトナムの幅広い経済開発目標にうまく適合しています。ベトナム政府は、テクノロジーを中心に据え、独自の促進措置を関係者と共同で設立しました。またIT起業者に対する税制その他の優遇措置を中小企業支援法に盛り込み、企業のオンライン・ビジネスを奨励するキャンペーンを推進しています。

しかしながら、女性が舞台の中央に躍り出るにはいたっていません。ベトナムでは女性の非識字率が男性のそれの2倍ですし、男性が1ドル稼ぐのに女性は75ドルしか稼げないのが実状です。Huongさんの学校にはコンピューター科学専攻の学生が56人いますが、女学生は彼女を含む8名しかいません。これも、科学・技術・工学・数学(STEM)における男女不平等の顕著な表れと言えるでしょう。

それでもなお、Huongさんはコンピューターやゲーム、それらの複雑な内部構造について徹底的に調べることに昂奮していました。彼女がプログラミングの勉強に使っているラップトップパソコンは、マイクロソフトの社員から贈られたものです。

「ゲームをやっていると、これって本当におもしろいなあって感じます。でもコンピューター科学を勉強していると、ゲームからバグをなくするには、たくさんの知識と経験が必要なんだと分かります。どのコマンドがどう作用するか、その論理を正確に知ることは、なんて素敵なことなんだろう」とHuongさんは興奮気味に語ります。

卒業後、彼女はソフトウェア試験技術者の仕事に就きたいと考えています。すでに日本の技術大手企業である東芝ベトナムから正社員採用の提示を受けています。これにどう応じるかはHuongさん次第です。

2018年のベトナムの雇用見通し

人材派遣会社各社は、2018年のベトナムの雇用市場はおおむね良好との見通しを示しています。ベトナムでは、製造基盤の開発が続いていることが一つの要因として挙げられます。

人材紹介会社キャリアリンクのベトナム求職者担当マネージャー アン氏は、「ベトナムの製造・産業部門の成長が2018年も続くことを期待する」と述べています。

ベトナムに進出・拡大する多国籍企業は増えており、新工場の建設が予想されることから、エンジニアや製造業専門家の需要は今後高まるとタム氏は見ています。

ショッピングモールや不動産計画の増加に伴い、国内小売部門の成長も見込まれます。

タム氏は、「2018年は事業提携のスキルに熟達した専門家の需要も高まる」と予想しています。

キャリアリンクの報告書によると、一般消費財(FMCG)産業、テクノロジー産業、医薬品産業では、社内法律顧問の募集が引き続きおこなわれると見られますが、金融サービス産業では、ますます複雑になる規制要件に対応して、内部統制・監査機能を担う新たな役職がすでに設けられたようです。

ベトナムの主要部門で着実に広がっているビッグデータの使用に伴って、ソフトウェアの高度熟練開発者が2018年も引き続き求められるでしょう。

しかしながら、マネジメントスキルに熟達したIT専門家やフルスタック・ディヴェロッパー(複数の技術分野についての知識や技能に精通し、一人でシステムの開発や運用がこなせる技術者)、フロントエンドのUI/UX専門家を見つけることは企業の人事責任者にとって至難の業でしょう。国内の労働市場には、それらに適した人材がいないからです。

企業はこの人材不足を克服するため、海外で活躍するベトナム人に期待する可能性が高いと見られています。

キャリアリンクアジアのヒエン氏は、デジタル経済の地域的拡大が続くなか、企業各社が競争力と市場シェアの強化をめざしていることから、多くの企業がオンライン/モバイル・プラットフォームの創設に動いていると述べています。

こうした大きな動きを受けて、多くの企業は、マーケティングと情報技術の分野で、デジタル技術に通じた専門家(特に非営業部門のデジタルインフラの運営に熟達した人材やニッチのテクノロジースキルを備えた人材)を必要としています。

ヒエン氏は、「営利的思考を発揮しつつ、複雑な人事管理に長けた人材の需要が高まる」との見通しを示しています。

2017年にふるい落とされた人材が労働市場に残ってはいますが、企業の人事責任者はほとんどの部門で人材不足への対応に苦しんでいます。

これは、海外経験があり国内の知識に通暁した高い潜在能力を持つ専門職の雇用に特別な影響を与えました。

ベトナム市場で事業拡大を計画する大手小売企業が増加するのに伴い、小売産業で働いた経験のある人事専門職が求められる可能性は高い。

技術的・専門的スキルの需要が生じていることから、長期的に文化適合的な人材の雇用をめざす組織が増えるなかで、人材採用プロセスはどの産業も一層厳しくなるでしょう。

専門職が転職する場合、年収は2017年よりもやや低い20%アップとなるでしょう。

同じ組織に居続ける場合、年収は前年度比で約10%アップが期待できます。

2018年(特に前期)のベトナムの雇用市場は成長すると予想しています。

卸売り、製造・生産、建設、工学は、どれも人材を最も必要としているセクターです。

ベトナムの多くの企業は、マネージャーとディレクターの需要が高まるとしながらも、それぞれの基準を満たす人材を採用するのは難しいと見ています。