エンジニアが農薬散布ドローンを開発

バクザン省北部のルックナム県ではカスタードアップル栽培が盛んです(総面積1,700ha)。テトと呼ばれる旧正月の祝祭後、栽培農家はカスタードアップルのハダニ被害を防ぐための農薬を手作業で散布しています。

「カスタードアップル栽培の支障となる害虫はそう多くいませんから、一回散布すればいいだけなんですが、ただ心配なのは、農薬を散布する人間が直接それにさらされてしまうことによる健康被害です」と語るのは、ルックナム県のBui Van Quang氏。

一方、定期的に農薬を散布する必要のある農作物には、米やオレンジ、ライチなどがあります。

ベトナム保健省予防医療総局によると、国内の農業従事者のうち、農薬の吸入により死亡した者は年間300人以上、深刻な健康被害を受けた者は5,000人とされています。

農薬被害の防止と散布作業の短縮を目的として、機械工学士のLe Phi Cuong氏と彼のチームは、農作物に向けて農薬を正確に散布することのできるドローンを開発しました。

このドローンはA16と呼ばれ、一度に農地1ヘクタールへの農薬散布が可能な10リットルの農薬タンクを搭載しています。A16を使えば、手作業よりも約30倍速い30分少々で散布作業を完了させることができます。

最大高度20メートルまでの傾斜地は、手作業での農薬散布には適しませんが、ドローンではそれが可能です。農業従事者はアプリ搭載の携帯機器でドローンを操縦します。散布作業をより迅速化することで、害虫や病気を適時に食い止めることができます。

A16はわずか22キログラムと軽量で、一機あたりの価格は農薬搭載可能量に応じて1億6,500万VND(7,200米ドル)〜3億6,800万VND(1万6,200米ドル)となっています。

「私たちは、安く、使いやすく、保守の容易な技術をめざしています」とCuong氏。

A16は、何か問題が生じたときにすぐに戻って来られるように6〜8枚のプロペラを備えています。進行方向に障害物があるときは、センサーがそれを感知し、障害物の3〜5メートル前でドローンを停止させます。またドローンは、平地であれ、段々畑であれ、一定の高度を保つことも可能です。

Cuong氏は、飛行術と飛行機に早くから関心を持っていました。幼い頃、彼の家族はハノイ児童宮殿の近くに住んでいました。子供たちはそこでさまざまな文化・芸術活動に参加し、授業を受けることができました。

「宮殿に行けば、いろいろな型の飛行機を見ることができました。それらは、私の大のお気に入りでした。空中を飛ぶものへの特別な関心は、大人になっても薄れることはありませんでした」とCuong氏は語ります。

Chong氏はその情熱があり余って、ハノイの航空クラブに入会しました。そこでは、飛行機やドローン、飛行術について、会員同士が単なる趣味の域を超えて、各々が持てる知識を共有します。

「クラブでは、同じ情熱を持つ人たちとの出会いがありました。私たちは自己流で学んだ各々の知識をお互いに共有し合いました」とCuong氏は言います。

飛行体験を繰り返し、機械や飛行装置への理解を深めるとともに、実地調査を通じて専門的知識と実践的経験を得たCuong氏は2015年にドローンの開発計画に着手しました。

Cuong氏は、栽培と植物保護の分野における18年間の経験を、Pham Quoc Chien氏の電子機器分野における20年間の経験や、経営学の大家Pham Quang Thanh氏の経験と融合させました。彼らは三人とも航空クラブの出身者です。

クラブの会員には、航空管制技術・オートメーションの大家Nguyen Hai Nam氏や国際貿易の大家Ta Huy Phuong氏、情報技術の専門家Bui Van Mihn氏らも名を連ねています。

各自が得意分野(オートメーション、ソフトウェア、デザイン、エンジニアリング)を担当し、市場への影響と市場のニーズについて分析しています。

「ドローンは、最近ベトナムでも評判です。私は農家がハイテク農機具を利用できるようになればと考えております」とCuong氏は述べています。

開発チームにとって最大の課題は、ドローン免許の取得ということです。ベトナムでは、飛行装置を飛ばしたい場合、当局の許可を得なければなりません。

製品を市場に投入するに先立って、Cuong氏と彼のチームは、農業大学や農業農村開発省など、関係当局の指導者たちと協力し、免許手続きの軽減が可能かどうかを検討する予定です。

Cuong氏の説明によると、「各飛行装置は、国防省が禁止している区域への侵入を防ぐため、飛行高度と可動範囲を制限している」とのことです。